北海道・十勝/NPO十勝文化会議「文化創造」

十勝で芸術文化を愛する人々が集い、十勝型文化を発信するために発足した十勝初の民間文化団体。

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第27回全十勝短歌大会、音更の山田さん大会賞受賞

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第27回全十勝短歌大会、音更の山田さん大会賞受賞

十勝管内の短歌愛好者が結社の枠を超えて一堂に会する歌会「第27回全十勝短歌大会」(NPO十勝文化会議、十勝毎日新聞社主催)が3月12日、帯広市内のとかちプラザ大集会室で開かれた。管内から118首が寄せられ、助言者、披講者による熱心な講評が行われた。作品応募者の互選で決める「高点歌」の最高賞となる全十勝短歌大会賞は、山田偕子さん(音更)が受賞した。今回、新設された、北海道を代表する歌人、時田則雄さんが選考する「時田則雄賞」は3人が受賞した。入賞作品と全応募作品を紹介する。

   ◎入賞作品

【高点歌】
■全十勝短歌大会賞

直球で癌を告げられ目を閉じる声の出ぬまま喉の渇きぬ 山田偕子(音更)

■NPO十勝文化会議賞

大寒の凪たる朝をこくこくと哺乳の仔牛に茜さしくる
 久保田信鈴(帯広)

■十勝毎日新聞社賞

正月の子らを見送り常の日の米二合研ぐ安らぎにいる
鳥井綾子(芽室)

■帯広市教育委員会教育長賞
秋仕舞ひ終ゆれば馬橇に枠付けて日銭を得ると砂利採りし日よ
坂下洋子 (清水)

■十勝文化団体協議会賞

巣立ちゆく子等見送りし大樹駅廃線久し宇宙基地成る森下吉加(帯広)

■帯広市民劇場賞

遠くより励まし上手な文届くしばれる夜を温もりて居る
加地真知子(帯広)

■佳作
「花は咲く」そのメロディーの流れ来るディーサービスの午後の始めよ
須田敏雄(帯広)

みどり濃き菜ばなを茹でて新春の目覚めよろしく一碗にせし
渕上つや子(音更)

潔いしばれだなどともう言えず春よはるよと焦がれておりぬ
米谷壽美子(音更)
北風につばさ貰ふやちぎれぐも鷹ともなりて迅さ増しゆく
木村百合子(帯広)

【助言者賞】
■中川明義賞
雪原に刈り残された青豆のはぜることなく莢春を待つ
宮崎幸夫(清水)


■舟橋伶子賞
大寒の凪たる朝をこくこくと哺乳の仔牛に茜さしくる
久保田信鈴(帯広)

■山川有古賞

直球で癌を告げられ目を閉じる声の出ぬまま喉の渇きぬ 山田偕子(音更)

【時田則雄賞】

夕焼けに染まる屋並のセピアいろ猫もわたしも昭和に還る  山川有古(広尾)

秋仕舞ひ終ゆれば馬橇に枠付けて日銭を得ると砂利採りし日よ
坂下洋子 (清水)

正月の子らを見送り常の日の米二合研ぐ安らぎにいる
鳥井綾子(芽室)

【特別賞】

新雪を仔犬のように転げをり吾子の後ろで大地は続く
長内美幸(清水)

ビルの上を群とぶ鳥は何ならむ翻るたび光となれり
松浦澄子(帯広)




   ◎全応募作品

金婚の夫と足並み合はせゆく十勝の原の夕映えの道        井上美恵子(幕別)
ささやかな茶房の隅でパンを焼くその裏方に徹し貫く     稲守登美子(帯広)
嫁ぎゆく姉を見送り淋しさに涙拭いし幼日もあり       阿部和子(帯広)
姿なき不慮の事故残りし遺族いかに生くべき         越坂幸子(幕別)
一にママパパも好きと言う幼やがて一番の恋の日も来む     松原みち子(音更)
古にタイムスリップ時止り歌会始め心静かに         半田攻三(帯広)
染る朝黒煙見るたび言付に汗拭い薪切り割った日を      佐藤岩男(帯広)
雪原に刈り残された青豆のはぜることなく莢春を待つ     宮崎幸夫(清水)
開墾は茅葺き住居で発せねど祖先はLDK夢に見もせず      齊藤智保(音更)
遊歩道に散り来て消ゆる風花かとほき山の端日のしづみゆく   櫛引孝三(帯広)
十勝川悠久の流れゆったりと大地に刻みて今日も暮れゆく     平泉尚登(帯広)
羽衣を広げたような薄紅の天空のバラ初めて咲けり         西原ハルエ(帯広)
「花は咲く」そのメロディーの流れ来るディーサービスの午後の始めよ 須田敏雄(帯広)
ささやかなことの嬉しき日常や漂白されし布巾たたみぬ    中田美栄子(芽室)
日だまりにひねもす編棒操りし亡母の手ほどき今娘に伝えぬ     田苗佐代子(帯広)
ちひさやか嬉しきことの巡りあひ今朝のトースト食むもひとしほ 小野洋子(新得)
イヤホンにラジオ聞きつつ寝入りゆく音はいづへか流れるままに 鎌田博文(帯広)
われ縫いし振り袖娘が着て孫も着せ二十歳揺れつつ介護の道へ 岡田静子(帯広)
夕焼けに染まる屋並のセピアいろ猫もわたしも昭和に還る     山川有古(広尾)
托卵も雛にかへりし頃ならむ朝靄の野に郭公の鳴く      滝野正子(帯広)
香しき牛舎になりけむ向日葵を食みし牛らと育みし日日     中島大和(芽室)
雪の下に秋蒔小麦は青々とひたすら春を待つ十勝の野     寄木由美子(幕別)
乳房切りかの湯煙の銭湯が遠くなりしと吾れに語れり     堀田正晴(音更)
痩せ枯れし足を摩れと言ふ父よ まだ歩きたいのですね 父さん 酒井武(帯広)     
秋仕舞ひ終ゆれば馬橇に枠付けて日銭を得ると砂利採りし日よ 坂下洋子(清水)
納骨を終えてひとりしじまの部屋に泳ぐふたつの金魚を見てり 橋本佳代子(清水)
覚悟して仕送りせねば数年間孫等の笑顔と娘の吐息      大澤赫子(帯広)
雪ゆるみはじめし駅に活けらるる蓮翹まぶし春をほほえむ     森山ヤヨイ(清水)
日髙路を登れば雲海先見えず大型バスの後ろつきゆく     村谷三恵(清水)
直球で癌を告げられ目を閉じる声の出ぬまま喉の渇きぬ    山田偕子(音更)
休日も子供ら遊ぶ声もなく十勝晴なるを見上げる老は     佐々木ヒロ(音更)
火のこころ水のこころも白樺は枝すがすがと受けとめてくれる 佐々木礼子(帯広)
雪の降る夜の黙にひたりゐて色づく頃の桜を思ふ         宝泉三枝子(音更)
子を背なに父母のふる里通ふ船過ぎし歳月ゆれつ目醒む     鈴木容子(帯広)
ヌプカウシがもっと大きく見える場所生まれし家は今も続きぬ 亀山清子(士幌)
子の居らぬ夜のソファーに寝る妻をテレビの灯り包みていたり 田中彰 (帯広)
紙面にて短歌読みしと声かけ来耕馬の時代に返りて語る     竹田君江(帯広)
きさらぎにのぞむが如く旅たちぬ桜のしたへと夫はとむらふ     作田和博(帯広)
正月の子らを見送り常の日の米二合研ぐ安らぎにいる     鳥井綾子(芽室)
詮なきに揺るるを宥め墨を磨る有為の奥山越える日あらむ     内田美佐子(音更)
薄雪の凍土に餌をあさりつつ白鳥は群れ鬨の声あげる     原田美和子(帯広)
この年の異常気象か庭木々に雨氷張りつく師走の朝に     相馬貴美子(帯広)
諸膝を折りてくつろぐ春の夕平和の鐘の揺らぎつつ鳴る     榮 晶子(帯広)
みどり濃き菜ばなを茹でて新春の目覚めよろしく一碗にせし     渕上つや子(音更)
がんばれと今日も応援琴奨菊日本優勝涙があふれる       佐藤政子(音更)
農の手にTPPの予波があろうとも 安全第一食の生産         大口和美(清水)
我営農TPPの荒波受けて立ち安全の糧生産第一         大口欣也(清水)
新年を病室にて迎ふ人七階の窓いつまで灯る         鳥海和江(帯広)
喜々として思ひ出語る姑なればいつもの主役は幼かる夫     嶌千津子(帯広)
起重機の天までのびるその先を鳶はゆうゆう輪を描きいる     岡安一五(上士幌)
行きゆけど一直線に道拓け十勝くにはら芋の花満つ      中川明義(帯広)
潔いしばれだなどともう言えず春よはるよと焦がれておりぬ     米谷壽美子(音更)
さがり神酒をひと口含みて芯に満つ齢かさねて行く道仰ぐ     竹原敏子(帯広)
開拓の樹林人馬を切り開き一枚畑に半世期過ぎ         菊池真喜子(音更)
TPPに翻弄されし年明けて雪積む畑原力ためをり         伊藤啓子(帯広)
終戦後の記憶ある故時としてさつまいもなど入れ米を炊く     及川節子(大樹)
新年の便り交わして七十年途絶えし今日はすこやか祈る     高橋幸史(帯広)
遠くより励まし上手な文届くしばれる夜を温もりて居る     加地真知子(帯広)
正しくも正しいですと言ひ難く丹頂鶴とか揶揄され生きて     花岡和正(音更)
いつどこでテロの恐怖がつきまとふグローバルな世の不安は増しぬ 松本淑子(芽室)
冬の雨ひそかに雨氷を咲かせたりつめたさの中のほのかな温み 清田孝子(帯広)
霜枯るる十勝の景の無機質やかはたれ時によりて惑ひぬ     千田慶子(帯広)
麗しき琉球の名を沖縄と地図見るままに替へつらむ いま     梅根文子(帯広)
夏なれば明るむ三時肩寒く衿布かき寄せ眠るふたたび     舟橋伶子(帯広)
人はみな己の寿命知るらしきもう逝くからと母は息絶ゆ     種田政朔(帯広)
想出を背負いて登る八十路坂血潮の鼓動確かめながら     山田キヱ(帯広)
生意気に現つを逸れたわれながら老いたる現在は怖じ気はじめり 中野智代(幕別)
朝光に染められつつゆく雪原よ小麦は夏を夢見て息衝く     山口勝(幕別)     
乱舞する恐怖のグラマンななとせにもたらす文明とまどう老老 細木利良(音更)
「イマジン」の愛と平和に共鳴し諍い戒め世界はひとつ     奥 豊子(帯広)
亡き友ら文読み返し泣き笑ひ五通りの字に浮かぶこと事     柴森千枝子(帯広)
でくのぼう東風かりそめし親に触る有られもない子座同じ迫む日 勝沼由正(帯広)
あちこちに尾を立て何食む川の面に白鳥親子の様の温ぬく     永田栄子(帯広)
大寒の凪たる朝をこくこくと哺乳の仔牛に茜さしくる     久保田信鈴(帯広)
北風につばさ貰ふやちぎれぐも鷹ともなりて迅さ増しゆく     木村 百合子(帯広)
病ゆえ赤きを好みし義父の手の施設のぬり絵形見となりぬ     能手真佐子(音更)
あの頃に戻れるような星が降りハミングにのるふたりの温度     尾上ひとみ(鹿追)
際立った観光産業とぼしくも十勝の小豆和生何どなどと     黒田好惠(帯広)
湖のきらめき刹那雪原に変る奇遇よ自然の力よ         渡辺コマツ(帯広)
五十路にて病にたおれガンではと!打くだかるも晩年の今日     武田榮造(帯広)
おだやかに初日昇るを窓の辺に祈りの形になりて見つめる     阿部キミ子(帯広)
鴨居までとどく甥たち正座して焼香して居り母の五十回忌     東村英子(帯広)
巣立ちゆく子等見送りし大樹駅廃線久し宇宙基地成る     森下吉加(帯     
寒の鐘チーンと鳴らして夫と息にここに居ますと掌を合わす朝 石井美恵子(士幌)     
凛烈の湖に糸垂れる釣りびとに夫ありし日のときめきを観つ     塚越美歌子(帯広)
今年こそ計画ばかり立ててみて実行出来ぬなまくら身体     斉藤かよ子(清水)
浜木綿の狂い咲きとわ知りつつも師走に開花報わるる我     伊澤佐恵子(帯広)
嫁ぐ夜の衿あしそる手ふるえつつ嬉しさ淋しさ亡き父偲ぶ     仲内陽子(帯広)
障害を持ちたる夫との八年余吾は前より生かされており     堀美津枝(芽室)
道すがら橋にたゝづみ眺めればからだに厳し雪景色かな     竹川正弘(幕別)
夕刊に載るべき方の名の見えぬ今宵の歌欄さみしさもあり     柳瀬宗央(帯広)
荒れ野に生まれし我見合い婚主と歩み三十余年         小森瑞恵(芽室)
細胞を染めて鏡見くっくりと赤き糸屑憎っくき結核         石川博 (帯広)
人生が二度あればいい今生の下手を来世で生き直したい     石川いくこ(音更)
労ともに肩いからせて道進みふと気がつけばはちじゅうと八     尾澤綾子(音更)
爆音はカラマツ林ゆるがせて八十路の操作なめらかに過ぐ     藤原美代春(池田)
銀竜草の凭れるごとく咲く花の暗がりに見ゆ浮かぶその白     酒井菊江(帯広)
草木も秋を装う吟行の目にうるわしき彫刻の径         武藤正利(音更)
凍雪に足を捉られし道の隅蝦夷栗鼠尾美見呑みて 敬礼     長田政子(帯広)
老いしいま夢に顕ちくる故郷の川の屈曲山女魚のことも     笹川幸震(帯広)
鉢分けの浜木綿つぼみ膨らみて春はまだかと胸張りて見ゆ     伊澤満州男(帯広)
水ばしょうこんもり白く水辺咲き風に一輪妖精のよう     阿部寛子(芽室)
暁に映える日高嶺凛凛とシルクロードもかくにしありや     大星悦子(帯広)
この先を延長として生きる身に悔い浅くしてこの世を渡る     貝塚知里(帯広)
新雪を仔犬のように転げをり吾子の後ろで大地は続く     長内美幸(清水)
母が逝き主なきあとの縁先に赤く咲きたる彼岸花かなし     佐々木誠一(帯広)
桟敷席大一番に目を伏せて息子は勝てり溢るる涙         田村小次郎(更別)
鉄輪のゆさぶる大地春霞水面映ろう煙たなびく         大崎和男(新得)
新聞に高校野球の記事が載る孫にも当たるスポットライト     西山勇(音更)     
ふる里の山河仰ぎつ幾年か 今浦島に募る寂しさ         豊田英子(足寄)
名づけらる故は知らず鬼百合のなぜ俯ける汝も美しき     阿部京子(帯広)
我を張って紛争などを何故にする泣きを見るのは己であるに     岩渕徳以知(芽室)
ビルの上を群とぶ鳥は何ならむ翻るたび光となれり         松浦澄子(帯広)
種播く頃又来るからと帰りたる子の声がする雪の降る夜は     二川幸子(幕別)
若き日の新聞配達糧となり月もにっこり懐しき道         河口敦子(帯広)
ボケたとかボケないとかを言い合いて親子の会話今日も続くよ 浅野勝彦(帯広)
忘れえぬ満州時代の逃避行色あせらずに伝えぬべし         渕上 猛(帯広)     
バックミラー小さく消えゆく切なさの老いゆく父母の永久に手を振る 佐藤哲司(帯広)

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