ウタリは今〜アイヌ新法元年[4]

存在の確立〜地位向上を目的に

帯広市は1995年12月、「ウタリ総合福祉推進計画」を独自に策定した。自治体が単独でこのような計画を作るのは北海道で初めてのことだ。“福祉推進”という通り、内容は文化振興以上に、アイヌの人たちの地位向上を目的に教育、福祉面で具体的な対策が示されている。「書かれているのは文化振興だけ」との批判もあるアイヌ新法と比べると、アイヌ民族の現実に対応したものといえる。

この計画の前段に、北海道が93年に実施したウタリ生活実態調査があった。北海道全体で2万3,830人、十勝には896人、帯広市に308人のアイヌの人たちが住んでいる。だが実際には名乗り出ない人がこの数字の3割近くいるという。

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東京で行なわれたアイヌ民族のデモ行進
(95年5月)。東京に出ていくアイヌ民族は多い。

調査によると、第一次産業に就く人の割合が34.6%と最も高く、生活保護率は全体の率より2倍以上の3.88%、進学率は中学卒で87.4%%、高校卒で11.8%と、全体の率より10%前後低くなっている。

この数字で見る限り、アイヌの人たちはいまだに社会的地位が低いと言わざるを得ないのではないだろうか。差別を受けたことがあると答えた人のうち、受けた場面が最も多いのは学校の42.0%、後に結婚、職場、交際、就職と続く。差別は生活のあらゆる場面で起こり、地位の低さにつながっていると考えられる。

帯広市はこの結果を受けて、福祉、文化、教育、住宅などの部局が連携した庁内横断組織の「ウタリ対策連絡会議」を94年に立ち上げ、96年度から2004年度にわたる計画を策定した。この連絡会があるため、例えば学校教員に正しい知識を持たせる研修、ウタリ教育相談員の配置、持ち家制度の促進など、帯広市の場合は現実に合った対策が行われている。

北海道にも「ウタリ福祉対策」がある。例えばアイヌ子弟の高校生や大学生に対する奨学金制度があり、毎月給付または貸し付けが受けられる。帯広市にウタリ教育相談員が置かれてからは、こういった制度の手続きを相談員が親に説明したり助言するなど、より細やかな対応ができるようになった。

北海道や帯広市には、このように福祉面での制度がある。だが、アイヌ民族は今日本中に居住している。「アイヌ新法で福祉に触れてほしかったと私が思うのは、日本中に住んでいるアイヌ民族に、北海道に住む私たちと平等な対策がされるべきだと思ったからです」と、ウタリ教育相談員の笹村一郎さんは言う。アイヌ民族が差別のある北海道を逃れて日本中に出ていった歴史は、今も続いている。アイヌ民族は、新法によって、日本の中での存在が今やっと認められたばかりだ。(おわり)(社会部=山本薫)


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